INTRODUCTION作品紹介
雲の上の散歩道
[ 演奏 ] 浜松市立富塚中学校
[ 作品解説 ]
「雲の上のひと」という言葉がありますが、雲の上には本当に人がいるのでしょうか?地上に雨が降ろうと雪が降ろうと、雲の上はいつも快晴ですね。私は、空を見上げて地上と宇宙の途中に浮いている雲を眺めるのが大好きです。もし雲の上に散歩道があったら是非歩いてみたいと思います、私など道を踏み外して地上まで真っ逆さま!ドキッとします。そういう意味でこの曲は夢の中の散歩道ということですが、雲を見上げて自然と人間のいろいろな情感の交流をイメージして演奏していただけるとうれしいです。
今回も小編成へのこだわりが反映され、ていねいな音楽造りが要求されます。小編成の合奏ほど難しいものはないと思います。特に、管楽器は声帯が楽器の中に入っていて呼吸そのものが響きを作り出しますから、そのコントロール次第でいろいろな事になってしまう。逆に考えれば、「可能性いっぱい!」そこが面白いところです。だから「どういう演奏にするべきか?」を楽しみながら小編成の合奏をたくさん経験してほしいと思うのです。
風のファンファーレ
ウィンド・
アンサンブルと
フレキシブル・バンド
のための
祝典音楽
[ 演奏 ] 浜松開誠館中・高等学校
[ 作品解説 ]
10周年を記念した祝典曲との依頼。そのため内容は明快な祝祭的なもの。が、そこはバンド維新。音楽面ではなく編成面での提言を試みた。
小編成スクールバンドの難しさは、人数が少ないことによる楽器編成の不足とアンバランスさもさることながら、「初心者も必ず重要な役割を果たさなければならない」点にある。これを解消する方法として近年に注目を集めているのが「音域さえ適合していればどんな楽器で演奏しても構わない」という考えで作られた「フレキシブル・アンサンブル」だ。しかし、ここには各楽器固有の表現が失われる、上手な生徒には簡単すぎる(あるいは初心者には難しすぎる)、という問題がある。
この曲は「上手な生徒」を想定した6つのソロ・パート(Fl、Cl、A-Sax、Trp、HrnまたはEuph、Trb)と、初心者を想定したフレキシブル・パート(木管3、金管3、低音1)、それに打楽器3パートとピアノ、という編成で書かれている。フレキシブル・パートは各パートに最低1奏者いればよいが、複数の楽器が存在してもよく、場面によって奏者数を変えてもよい。また、ある箇所では1st flexを担当していた者が2nd flexに移る、といった工夫もよいだろう。場合によってはソロ・パートを複数人で重ねて演奏してもよいし、打楽器も1stはマルチを要求しているが分散させるのもよい。柔軟な運用で、各バンド独自の「色」を創って頂きたい。
曲自体も、全曲でコンサート・ピースとしても使えるが、部分的に抜粋し式典ファンファーレとしても使えるだろう。
吹奏楽のための俗祭
[ 演奏 ] 浜松市立南部中学校
[ 作品解説 ]
「祭り」は、地域的にも時代的にも、様々や様式や形態を持っています。また私たちの深層にあるアイデンティティーや共感を喚起したりもします。この作品は、そうした伝統と芸能による「祭り」をモチーフに、3つの部分から構成されています。
冒頭の牧歌的なホルンの主題から前半の囃子へと入りますが、裏打ちするお囃子は日本では珍しく、西日本(山口:平家踊り、大分:鶴崎踊り)にみられる独特のノリと踊りの賑やかさを表出しています。中間部のゆったりとした踊りは、富山の風の盆や熊本の山鹿灯籠踊りの風情をモチーフとしており、続く後半部のアレグロは、特定の祭りではなく、鯔背な男衆の壮観な祭り姿をイメージして演奏して頂ければと期待しております。
Cretaceous Wind
[ 演奏 ] 静岡県立浜松北高等学校
[ 作品解説 ]
さあ、いよいよ出発です!
風に乗ります。
時を遡ります。
変わる風景、
広がる大草原。
そこを群れで疾走しているのは小型獣脚類!
狩りに向かっているようです。
向こう側には草食の竜脚類の群れ。
ランチに狙われているのでしょう。
この時代のキングは勿論彼ら!
陸、海、空 全てを制覇していました。
彼らの中には、
カラフルな羽毛を纏ったもの、
最強のハンターだったもの、
子供達に限りない愛情を注いだもの、
ビル5階の窓が覗けてしまうほど巨大なもの、
手のひらサイズのものetc.
皆生き生きと
生命の営みを高らかに謳歌してます。
悠久のパレードへようこそ!
彼らは約1億5000万年間もの間
地球上に君臨した究極の覇者であります。
白亜の風が吹きます。
天上の花束
[ 演奏 ] 浜松市中学校選抜吹奏楽団
[ 作品解説 ]
私の恩師である「故・尾高惇忠先生へのオマージュを書いてほしい」という大きなテーマを受けて、悩んだ末に書き上がった楽曲です。東京藝術大学名誉教授として数多の若手をご指導された尾高先生は、2021年2月末にご逝去されました。
駆けつけた逗子教会でのご葬儀、式終わりの献花にて、棺の中の、先生の小柄なお身体の周りに、皆で山ほどの花を捧げました。色とりどりの花に包まれて安らかに眠られる先生のお姿は、私に深い印象を残しました。曲全体は、天上の恩師に花束を贈るというイメージで(死後もなお各地で初演・再演される尾高先生の作品群に敬意を評して)、トリルやトレモロ、同音形の反復奏法などで、花々が鮮やかにきらめく様を描きます。また、終盤のトランペットで哀悼のコラールが捧げられ、天上の世界が明るく美しいことを描いて、華やかに揺めきながら終曲します。どうぞ、大切な故人を想い出しながら演奏し、お聴きいただければ幸いです。
バンドの為の奇想曲
[ 演奏 ] 浜松ユース吹奏楽団
[ 作品解説 ]
奇想曲とはイタリア語で【カプリッチョ(Capriccio)=気まぐれ・ごちゃ混ぜ】という意味合いの楽曲を指します。この様式は、主にメンデルスゾーンなど19世紀ロマン派時代の楽曲(主に鍵盤楽曲)に多く見ることができますが、その歴史は古く17世紀バロック時代にもこの様式を遡ることができます。この曲は単に思いのままに「気まぐれ」に作曲したのではなく、調性感や形式に一定の規則性を持たせるため古典的手法であるソナタ的な形式を取り入れました。
曲の主部は、比較的テンポの速い舞曲風の6/8拍子と、短調的なエオリアの音階を用いたスペイン風の旋律を組み合わせています。中間部から再現部にかけては序盤のモチーフを用いながら様々に展開して行きます。
もしかしたら「バンドのための舞曲的奇想曲」の方が曲名として適切なのかもしれませんね。
とは言っても私が一番表現したかったのは人間の「喜怒哀楽」です。あまり細かいことは気にせず、移り変わる曲調を楽しんでいただければ幸いです。