INTRODUCTION作品紹介
Waltz for
Gil Evans
[ 演奏 ] 静岡県立浜松北高等学校
[ 作品解説 ]
Gil Evans(1912-1988)はDuke Ellingtonと並んで、ジャズを代表するピアニストであり、ビッグバンド・リーダーかつ作編曲者でした。ビッグバンドにホルンやチューバを取り入れた先駆者でもあり、革新的・実験的な書法が特徴でした。彼の音楽の素晴らしさは、常に<自由である>ということで、演奏者によって色々な解釈ができるところであり、それは即ちジャズの最大の魅力と共通しています。<個人のソロと全員によるアンサンブルの 対比>がこの曲の(そしてジャズの)重要なテーマなので、Aにアルトサックスソロ、その後、GからとMからに長いソロがあります。トランペットとフルートに書きましたが、他の楽器でも構いません。しかし、実際問題いきなり即興演奏で、というのは難しいと思うので、書いてあるソロを元にして、自由に変えていただいて結構です。 ソロのコンピング(伴奏)は最初のソロはヴァイブラフォンが、後のソロはピアノが中心になるようにして、音色の変化を狙っていますが、こちらも自由なニュアンスでやっていただいて結構です。ベースラインも書いてある通りの必要はありません。ドラムとパーカッションは、譜面に表現できない部分が多く、難しいと思いますが、リズムセクションがとても大事なので、色々と試してみてください。最初の6拍子はハネないリズムなのに、Mからスイングの3拍子になるところは特に難しいと思います。しかし、スイングというリズムばかりは、言葉で説明できず、聴いていただくしかありません。この曲が、ビッグバンドやジャズを聴くきっかけとなれば、とても嬉しいです。
星の彼方へ
[ 演奏 ] 浜松市立積志中学校
[ 作品解説 ]
曲の冒頭の、キラキラとしているけど穏やかな楽想から「星」という言葉を連想し、「星の彼方へ」というタイトルが生まれました。美しく輝く星が散りばめられた、穏やかな夜空のイメージです。個人的に、「星」という言葉をタイトルにつけるのが昔から好きだったのもありますが、この曲の場合は、穏やかな楽想から始まり、どんどん発展していき、核になるモチーフが様々な変容をし、多様な姿を見せていく構成になっています。「彼方へ」としたのは、曲の後半、未来へ向かって突き進んでゆくような終わり方になっているためです。ゆったりと歌う箇所は極力縦の線を感じさせないよう伸びやかに、そしてテンポが早い箇所はタイトにキレよく、といった風にメリハリをつけることによって、各セクションが活きてきます。細部に散りばめられたモチーフを意識しながら、冒頭から終わりまでを1つのストーリーと意識して演奏すると、より豊かな表現になります。
Can You Be
a Rock Star ? /
Harmony of
You and Me
[ 演奏 ] 静岡県立浜松湖南高等学校
[ 作品解説 ]
学生時代、合唱と卓球をやっていた身として、クラスのヒエラルキーの中でめっちゃ地味だったように記憶しています。(※個人の体験に基づきます。)本来、音楽ってめっちゃカッコイイものなんで「歌と音楽を愛するみんなが最高に輝けるステージ」が必要だと思いました。音楽とともにある人は、他人から羨望の眼差しを受けなければいけないんです。アーティストがライブをするみたいに、オーディエンスを巻き込んで踊ったり笑ったりハイタッチしたりウェーブしたり駆け回ったり。そして、あの人へ届けるために歌うの。
「Can You Be a Rock Star ? 」
8 回裏に逆転ホームランを打ったりすると、“You’re a rock star!!!”(オマエがいっちばん☆だぜぇぇぇ!)とチームから言われたりしますが、甲子園でチャンステーマとして演奏できるような曲を目指しました。この英語はゴリゴリのおじさんや挑発的なお姉さんがシャウトしてます。サビのVocaliseをオーディエンスと歌っても良いし、楽器のみで演奏することもできます。
「Harmony of You and Me」生きていると多くの人はいろんなものを失って、ほんとうの歌を忘れてしまう。本当に歌が必要な場所に歌はないのだ。歌が必要なのは、客席のあなた。あなたと私のハーモニーは、心を溶かす。歌うあなたは輝いてる。どうして人目なんて気にして生きるようになったの?私たちはあなたとシェアしたい!
私は田舎者なので、地方の小さな部活でも演奏できるように、最小のマーチングバンド以外はoptionalにしました。ヒエラルキーへの復讐?笑 音楽を愛する人にはヒーローになってほしい。
Dialogos-Distance
[ 演奏 ] 浜松聖星高等学校
[ 作品解説 ]
未曽有のウイルス拡大で、私たちは否応なしに他者との距離をとって行動せざるを得なくなりました。元来寄り添って合奏する音楽においても新しい演奏形態が登場し、隔たりがある中での対話の意味について、改めて考えさせられることです。この作品は、そのような状況下で出会った様々な演奏会に発想を得て作曲されました。
曲は、「対話―距離」と訳されるタイトルに表されるように、“隔たり”のある他者との間に生じた“意味の流れ”が、やがて新たな理解に至り、共に創造的世界へ集結するというイメージによって書かれています。曲を構成するにあたり、大いなる存在としての”FATHER(父)”という言葉を曲の中心に据えています。“ファ、ラ、レ#、シ、ミ、レ” という音名に変換されたその言葉は、音組織の基として構成され、移り変わる様々な楽想において終始共有されるようになっています。また、FATHERという文字に含まれる様々な単語も音に読み替えられ、素材として随所に使用されています。対話の深みが距離というハンディを凌駕する世界を夢見つつ、フレッシュな演奏を楽しみにしています。
星への誘い
-Invitation to
the stars-
[ 演奏 ] 浜松市立細江中学校
[ 作品解説 ]
もともと「星界の紋章」というアニメシリーズのテーマとして作曲したもので、広大な宇宙空間を航行していく宇宙船軍団というイメージです。
同じメロディのテーマが各楽器によって、繰り返されますがバックの音に埋もれてしまわないようにしっかり演奏して下さい。
曲の後半に行くにしたがって、アッチェルランドとクレッシェンドで盛上げていって、エンデイングのホルンは思い切ってフォルテッシモで音を割るような雄叫びのような感じで演奏して下さい。
出来るだけ長く伸ばして最後はピアニッシモでおわります。
Tango
Appassionato
[ 演奏 ] 浜松市立開成中学校
[ 作品解説 ]
タンゴと言えば普通アルゼンテインタンゴとコンチネンタルタンゴの2種類に大別されるのですが、最近ではアストル・ピアゾラ作曲のリベルタンゴがヨーヨーマのチェロ演奏によりリバイバルヒットした事も有ってピアゾラ風モダンタンゴというジャンルも確立されて来た様な気がします。
30年程前にカラカスのある音楽祭でピアゾラに会った事が有りますが、非常に血の気の多いひとで、成る程あの性格ならあんな曲を書くなーと感心した覚えが有ります。
この曲もピアゾラを意識して書きました。fはうんと激しく、pはうんと優しく演奏して下さい。
日本人はどうも愛情の表現が下手だと言われていますが、この曲を演奏する時は自分がアルゼンテイン人になった積もりで、恥ずかしさをかなぐりすててうんと情熱的に行ってみましょう。
おかえりゴブリン
[ 演奏 ] 浜松市立高等学校
[ 作品解説 ]
人里離れた森の奥に、お母さんゴブリンと子供ゴブリンが棲んでいました。お母さんゴブリンは、おそろしいものがたくさんある森の外へは決して出てはいけないと言います。子供ゴブリンはお母さんゴブリンの言いつけを守って森の外へは出ませんでした。でもある日、森のはずれで赤いマントのようなものがひらひらと舞っているのを見つけた子供ゴブリンは、お母さんゴブリンの言いつけをすっかり忘れ、思わず追いかけていってしまいました。夢中になって追いかけているうち、気がつけば森の外、しかもあたりは真っ暗です。赤いマントはいつのまにかいなくなり、闇夜にほうほうと変な鳥の鳴き声も聞こえます。子供ゴブリンはなきべそをかきながら、そばにあった茂みに隠れました。どれくらい時間が立ったでしょう、突然目の前の沼が明るくなり、見たこともないような、きれいなもの、あやしいもの、ゆかいなもの、かなしいもの、ふしぎなもの、おそろしいもの、など、それはそれはいろいろなものが次々と現れては消えていきます。心を奪われてそれらに魅入っていた子供ゴブリンですが、にわかに怖くなり隠れていた茂みから飛び出しました。もう怖くて怖くてたまりません。だって、うしろからなにかおそろしいものが追いかけてくるのです。子供ゴブリンは泣きながら走りました。そして、うしろにいるおそろしいものに追いつかれそうになったとき、森の入り口に立っているお母さんゴブリンが見えました。お母さんゴブリンも気がついてこちらに向かって走ってきます。「おかあさん!」子供ゴブリンも懸命に走ります。子供ゴブリンの目に映るお母さんゴブリンの姿がぐんぐんと大きくなっていきました。
オペラ
「ミスター・
シンデレラ」による
パラフレーズ
[ 演奏 ] 浜松市立開成中学校
[ 作品解説 ]
2001 年に初演したオペラ「ミスター・シンデレラ」(高木 達台本/鹿児島オペラ協会委嘱)から4曲のメロディーをもとに吹奏楽用に構成した作品です。(オペラについての概要は、インターネットを参照してください)。この吹奏楽曲だけを演奏すると、ミュージカルと思う人もいるかもしれませんが、オペラ全体としては歴とした「オペラ」になっています。「オペラ」とは何か、についても、また別の機会に。
第1曲 ダフニア オペラ冒頭、薫が主人・正男の不在をダフニア(ミジンコ)のせいだと笑いながら歌う。
第2曲 研究室のコンパ正男が務める大学の研究室の学生たちが、今夜はコンパだ、と陽気に歌う。
第3曲 いつわりの午前零時 赤毛の女が策略の筋書きを歌う。
第4曲 ある朝、人生を振り返ったとき「ある朝、人生を振り返ったとき、そばにいた大切な人」、と、愛する人とともに生きる幸せを歌う。
Concertino for
Piano
and Wind
ensemble
~コンチェ
ルティーノ~
[ 演奏 ] 浜松日体中・高等学校
[ 作品解説 ]
題名の「コンチェルティーノ」は、協奏的小品といった意味で使っています。ソロ・ピアノは(伴奏に乗ってテーマを歌い上げるわけではなく)ウインド・アンサンブルの楽想を強調する立場です。両者はお互いに問いかけ、答え合うことで、一つの音楽を協力して作っていきます。ところで、音楽には色々なタイプがあり、何らかの偏りがその曲の魅力になっていくようです。例えば、リズミックで厳格なテンポ指示を持った曲は、それを守った時の美しさ、テンポが変化した瞬間のゾクッとするほどのカッコよさが好きです。今回のこの曲の場合、3つのテンポを持っており合計8回テンポ変化の指示があります。この3つのテンポ(72・108・144)はストラヴィンスキーの『管 楽器のシンフォニー集』から啓示を受けています。また、その当然の流れとして絵画におけるキュビズム(立体派)からのヒントも生かし、同じ物を中心に置き3つの角度から眺めた感じ・・の楽想の展開は、エネルギーが充分満たされたのちの「想定内」の変容ではなく、「想定外」や「唐突」で思いがけないものかもしれません。