バ ン ド 維 新

A R C H I V E

過去の開催記録

2014.3.8 Sat - 2014.3.9 Sun

バンド維新2014

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バンド維新2014

INTRODUCTION作品紹介

Winds singing 
a song

[ 演奏 ] 浜松市立開成中学校

[ 作品解説 ]

この作品で私は、鍵盤ハーモニカの懐かしい音色を、吹奏楽の響きのなかに仲間入りさせようと試みました。そして、そのことによって「風」のひと吹きが交錯するような短編を書きたいと思ったのです。
「風」というのはどのように吹いているのでしょう?ここでは菱形を横長に伸ばしたように吹くという設定をしました。この曲に登場する「風」の殆どがこの形をしています。幾つもの風がズレながら吹いていると、そこにメロディーが聴こえます。
ひとりひとりのパート譜を見ると、響きが次第に膨張し、頂点をつくり、そして弛緩してゆく、つまりひと吹きの「風の形」ばかりが書かれています。隣の人と自分の所では違う風が吹く、そして皆で補い合い、聴き合い、楽しみながら呼応してひとつのメロディーを造って行ければと思います。ひとつのメロディーを分解して交代で歌う(13~14世紀の多声音楽で行われた)「ホケトゥス」の手法とも共通点があり、合奏の形態にも色々あるということにも気付いて欲しいと思います。
曲の終盤で風が残していった様々な言葉が、囁くような響きの集合体となって聴こえますが、文章化せず、何を語っているかは判然としないようにしてあります。

Matto Grosso 2014

[ 演奏 ] 浜松市立湖東中学校

[ 作品解説 ]

ブラジルのギタリストにバーデンパウエルと言う名手がいる。
パウエル奏法という言葉がある位だから、ギターがめちゃ上手の天才ギタリストであることは言うまでもないが、作曲者としても数々の名曲を残している。なかでもブラジルの民族楽器のビリンバウにインスパイアーされて作った「ビリンバウ」は世界中の名ギタリスト達がカバーをしている名曲だ。
1970年代に彼が来日した時、NHKの番組に出演し、僕が音楽監督を担当した縁から親しく付き合わせて頂いた思い出がある。その時に聴いた「ビリンバウ」の印象は真に強力で、その後、二度ほど訪れたブラジルの想い出とも重ね合わせて、「マトグロッソ」と言う曲を音楽畑アルバムに収録した。今回、ブラスバンドのために大幅に手を入れ、リアレンジしたのが今日お聴き頂く「マトグロッソ 2014」である。
ビリンバウという楽器は元々、弓の弦をはじいて遊んでいるうちに段々楽器として認知されるようになったと聞いている。演奏にあたってラテン楽器を担当するプレイヤーは、譜面をある程度マスターしたら、アドリブ奏法を取り入れて自由に演奏して欲しいと思う。マトグロッソは緑濃いアマゾンの森の意味で、密林の奥深く潜んでいる極彩色の熱帯の鳥や動物たちを頭に描きながら、神秘的な森の静けさと爆発するアマゾンの躍動感とを、コントラストを持って表現して欲しい。

Ave Maria ---
virgo serena for
female choir wind
 ensemble

[ 演奏 ] 浜松市立南陽中学校&ジュニアクワイア浜松

[ 作品解説 ]

前回の(アヴェ・マリア)に次ぐ作品としてこの曲を構想した。構成を以下に記します。
①:イントロ 1~34 、②:主部A1 35~50、③:間奏 51~62、④:主部A2 63~78 - 主部A3 79~90、⑤:間奏 - イントロ 91~117、⑥:主部B 118~141、⑦:主部A4 142~157、⑧:間奏 158~165、⑨:コーダ1 166~181、⑩:コーダ2(アーメン・コーラス) 182~208。
以上をもう少しコンパクトにまとめると、I - ①、Ⅱ - ②+③、III - ④+⑤、IV - ⑥、V - ⑦+⑧、VI - ⑨+⑩、のように全6部と捉えて良いでしょう。
40人くらいの女声(児童)合唱を想定して作曲。吹奏楽と合唱とはとても良く「溶け合う」。もしそうならないとしたら何かが「違っている」のである。合奏と合唱の「融合体」は「第九」を持ち出すまでもなく、音楽の理想型ではないだろうか。いずれアマチュアの皆さんが取り組んで下さるのを楽しみにしている。

秘儀Ⅱ

[ 演奏 ] 浜松海の星高等学校

[ 作品解説 ]

「秘儀」のシリーズは、宗教や内容を特定しない秘教的な祈祷の儀式をイメージして作曲されている。
(秘儀II)は、管楽器の選択設定が自由な7つのパートと、金属打楽器と膜質打楽器を中心とした4奏者による打楽器アンサンブルの組み合わせによって構成されている。7つの各管楽パートは複数(同種もしくは異種)の楽器のユニゾンで奏されても良いし、単管のソロによっても良い。あるいはまた、ひとつのパートにおいて複数楽器による部分とソロの部分を設定しても良い。出版スコアに示されている楽器設定は、あくまでもひとつのモデル・ケースに過ぎない。
曲は以下の5つの部分から成っている。
第一部(冒頭〜第26小節)は、トゥッティの太いユニゾンの旋律(祈祷歌のような)を基調に作曲されている。
第二部(第27小節〜第49小節)は、メリスマ(コブシのような旋律的装飾音)を伴うヘテロフォニー。
第三部(第50小節〜第78小節)は、舞曲調の速いスタッカート点描群の流れと語るような太い旋律線の共存。
第四部(第79小節〜第91小節)で、第一部的ユニゾンの回帰。
第五部(第92小節〜最後)は、緊張感高く祈祷を締めくくるようなコーダ。

Dances for 
Wind Orchestra

[ 演奏 ] 静岡県立浜名高等学校

[ 作品解説 ]

スタイルや音調の異なる3つの舞踊音楽的楽想を組み合わせた作品です。
1つ目は、アフタービートの効いたリズムという意味ではアメリカ・ポピュラー音楽を、しかし調性の曖昧な音調が現代音楽を象徴する部分。
2つ目は、シンプルなワルツで、他の2つに比べると調性も感じられる、ヨーロッパ・クラシック音楽を象徴する部分。
3つ目は、アジアを代表して我がルーツである朝鮮半島の伝統音楽で用いられるリズムパターンのひとつを使い、音調は他の2つの中間を狙っています。
これら3つの音楽を、異質性を保ちながらも一種の簡略版ソナタ形式の枠の中に並列させることで、バルトークが「舞踏組曲」で成し遂げたこと、即ち「諸国民・諸民族の連帯」を音楽というユートピアの中で表現することを試みました。

宿望のチカラ

[ 演奏 ] 浜松市立北星中学校

[ 作品解説 ]

今回の作品は吹奏楽だけに限らず、あまりフューチャーされることのないトロンボーンにスポットを当ててみました。誰でもすぐ口ずさめるようなメロディでバリエーションの富んだリズムパターン、色彩感豊かなハーモニーを織り交ぜてポップな作品になっています。
曲の構成としては大きく分類して5つのメロディとそれを連結するブリッジで成り立っています。Cのメロディはとてもシンプルで「純真」、D,Eは「喪失感」、Fは「ロマンチック」、Hのブリッジは「未来への予感」、I、Jは「安定」,Kは「加速」のイメージです。それ以降はこれらのバリエーションです。とても抽象的な表現ですが演奏者各人のイメージで演奏してもらえると嬉しいです。
リズムパターンに関して2、4、8、16ビートが交互に現れますが基本的にはビートが変わるだけで曲中、同じテンポで進んで行きます。
またA(それとそれに準ずるフレーズ)以外はポップスやジャズ、ボサノバ音楽でのアーティキュレーションで演奏すると一層この曲が引き立つと思います。具体的なアーティキュレーションはデモンストレーションの演奏を参考にしてください。
最後に吹奏楽において「ポップス」的な作品がもっと一般化されることを切望します。まだ発揮出来ていない吹奏楽界の持つ可能性を発揮する突破口になるように思います。

Schrodinger's cat

[ 演奏 ] 静岡県立浜北西高等学校

[ 作品解説 ]

オーストリアの理論物理学者、シュレーディンガーが1935年に提唱した思考実験が、所謂「シュレーディンガーの猫」です。これは、すご~く簡単に言うと「ふたをした箱の中に猫が1匹いる。箱の中にはラジウムという原子が一つだけあり、そのラジウムが放射線(α粒子)を出すと反応して毒ガスを出す装置も置いてある。仮にラジウムが放射線を出す確率を1時間に50%だとすると、1時間後の猫は死んでいるか生きているか?」という架空の実験。
「生きてるか死んでるか、どちらかに決まってるじゃない!」と結論を急ぐなかれ、量子力学上は「この猫は死んでいる状態と生きている状態が両方重なり合っている」と認識するのです。なぜそうなるかというと…お話はここから先が面白いのですが、まあそれはみなさんに調べていただくとして…。
人の心にも世の中に起きるいろいろなことにも、白黒つけにくいことたくさんありますよね。「Aさんも好きだけどBさんも好き」「辛いけれど楽しい」「同時に存在する多元宇宙」等々…。答えは無限にあるようにも、一つの真理に近づいていくようにも見える…曲は常に二つの要素を含みながら進んでいきます。例えば鏡に映った相反するメロディ、交互に現れる一番遠いコード、一つの和音がトリルによって瞬間さまざまな色を行き来する世界、等々。
さて、先ほどの「シュレーディンガーの猫」、結局のところ死んでいるのでしょうか生きているのでしょうか?答えは簡単。「ふたを開けてみれば良い」のです。
謎は続くとしても、まずふたを開けてみましょう。答えはそこにきっとある…かもしれない。

堕天使たちの踊り

[ 演奏 ] 光ヶ丘女子高等学校

[ 作品解説 ]

この曲は一見、細かい音符が沢山並んだ譜面に見えるかもしれませんが、実はジャズ音楽に欠かせないシンコペーションやポリリズム、そして”減七和音”という種類の和音を二つ組み合わせてできる”コンビネーション・オブ・ディミニッシュド・スケール”という音階をふんだんに取り入れて作曲されています。慣れないリズムや音列かもしれませんが、遅いテンポから練習してみてください。自分の演奏部分に慣れたら、次は合奏です。この曲は、メロディ、メロディのお手伝いをする旋律、伴奏、ベースラインが、それぞれ複雑に支え合ってできています。パズルを組み立てるように、他の人が一体どんなことを演奏しているのかよく知り、よく聴きながら自分のパズルピースをはめていってください。
この曲を通してジャズ音楽に興味を持ってくださる方が増えることを願っています。この曲のフレーズやリズム、そして合奏法は、もしあなたがジャズ即興演奏をすることになったときも役に立つはずです。