INTRODUCTION作品紹介
吹奏楽のための
ファンファーレ・
フーガ・コラール
[ 演奏 ] 静岡県立浜名髙等学校
[ 作品解説 ]
だいぶ昔の話しになりますが僕は1966年藝大を卒業してパリ音楽院に留学しました。当時はシャランやデュリュフレなど和声法、対位法、所謂エクリチュールの素晴らしい先生方が沢山いらして、僕はデュルフレ先生のクラスで学びました。当時はそれほど熱心な良い生徒ではなかったのですが、それから50年近く経った昨今、その頃学んだエクリチュールの素晴らしさを再認識し、これを作品として生かしてみようと思い立ち書いたのがこの曲です。
具体的には、ファンファーレ・フーガ・コラールの三つの部分から構成されています。又、教会旋法、いわゆるグレゴリアン旋法が用いられています。
吹奏楽の作品を書くのは私にとって初めてのことなので色々と迷いましたが、「吹奏楽、それは即ち管楽器の集合体、だとすればパイプオルガンとも共通する世界が有るのでは…。」といった発想からこの曲は生まれました。
Fanfare-dreams
[ 演奏 ] 浜松市立与進中学校
[ 作品解説 ]
これは、無心に吹き続けるこどもたちの「祭りのファンファーレ」です。
もちろん、昨年5月に赴いた「浜松まつり」の凧揚げ合戦から発想しました。ひたすら自然倍音を追い続けるこどもたちのすがたは、まさに無我の境地を感じさせました。多数のトランペット群(!)の量感が何とも好ましく…響きが今でも聴こえてきます。これを是非ステージでこどもたちに吹いてもらおう!これが私の「夢」となり、題名が「ファンファーレ・ドリームズ」ということになったわけです。
だから、演奏上の注意点はありません。ピッチが少々狂っても、リズムがずれてもこの場合おおきな問題にはなりません。汚れのない無垢の響きが最高の表現となります。周囲の環境をつくるアンサンブルのほうは、多少おとなの音楽かな?
Beauty
[ 演奏 ] 浜松市立篠原中学校
[ 作品解説 ]
この曲は、映画「Beauty~うつくしきもの~」の主題曲を編曲したものです。映画は、村歌舞伎に生涯をささげる男たちや、昭和という激動の時代に翻弄されながら懸命に生きた人達を、静謐な表現で描いています。
主題曲は、静かにシンプルに、ゆっくりと、一言一言語るように進んでいきます。小さな感情の起伏はあってもドラマティックにはなりません。でも秘めた気持ちは失わないように、単純な三和音が抑えられた心を映し出すのです。その音は暖かくもなり、冷たくもなり、悲しくも響きます。
楽器を鳴らし、豊かな音で美しい和音を奏でて下さい。
ディアーナの息吹
[ 演奏 ] 浜松海の星高等学校
[ 作品解説 ]
日が沈み、森に静寂な闇が訪れると、木々や生き物はそっと息を潜め、眠りに就くと言われています。そして、森の魂を包み込む様に見つめる、森の女神ディアーナ。この曲は、ディアーナの温かい優しさ、生き物達の溢れ出るエネルギーを、物語の様に紡いでいます。
静かに昇り始める太陽。その光とエネルギーを感じ、少しずつ息を吹き返す森の生命達。そんないつもと変わりない朝を迎えたはずの森に、突然嵐が襲いかかります。森の風景は一変し、命がけで生き延びるための戦いが始まります。
雨があがり、風がやむと、汚れたものが全て洗い流され、清らかな空気と共に、新しく生まれ変わった美しい森が目の前に現れます。鳥たちは歓びに満ちたメロディーを奏で始め、それに答える様に、優しい風と一緒に伴奏を始める木々。
皆さんの若々しい息吹で、自然の神秘や脅威、そして美しい森の再生を表現して頂けたら…と願いを込めて。
スピラ・スペラ
[ 演奏 ] 静岡県立浜松商業高等学校
[ 作品解説 ]
書き慣れない小編成で音楽が痩せてしまわぬよう、線で形作っていこう、というのがこの曲の出発点です。それぞれの楽器が旋律として重なっていくことで、音の厚み以上の発言力を持たせられるのでは、と期待して。そこから構想も線的なもの、変化はありつつも一貫した流れであるものへと傾いてゆき、たどりついたのは、植物の蔓が陽のあたるほうへ少しづつ伸びてゆく、伸びていって最後に光に届く、そんなイメージです。「パンドラの箱」の中に最後に残った希望のように。
「スピラ・スペラ」はラテン語で「息をなさい、希望をもちなさい」という意味です。オネゲルの『火刑台のジャンヌ・ダルク』というオラトリオの中で、ジャンヌが聞いた天の声としてとても美しく歌われています。その歌声とこの曲は似ても似つかぬものですが、「希望」の前にまず「生きぬく」というところは、結構この曲想に似つかわしいように思っています。
怪獣のバラード2013
[ 演奏 ] 静岡県立浜北西高等学校・ジュニアクワイア浜松
[ 作品解説 ]
1970年代、NHKにコーラス番組「ステージ101」があり、1972年から73年にかけ7曲を今月の歌として提供したが「怪獣のバラード」は、その中のひとつ1972年6月の今月の歌。60年代、渡辺プロダクションには東京音楽学院があり最盛期には参加400名を数えた。各地に存続のようだが出身者が多数芸能界で活躍している。私も指導した経験があるが大阪万博への東京音楽学院「スクールメイツ」出演を最後に米国に渡った。
帰国後NHKから声がかかり「ステージ101」の指導にあたった。ありがたいことに41年経った現在でも人気は衰えることなく各団体で愛唱されている。作詞家は山上路夫を始め及川恒平など有能な面々。しかし岡田冨美子の詩は格段の描写でストーリーを描き出し作品に楽しさと彩りを添えた。かくて今回は六分という財団指定時間枠を使って状況描写を試みたが、勢い余ってすこし時間オーバーしてしまった。
前半は怪獣の砂漠の暮らしの描写である。今回は「怪獣の暮らし」に狙いを定めた。みなさんと経過を楽しみたいので是非お力添えをお願いする。このような機会を与えてくださったみなさんに感謝の言葉を。
日本民謡による
ラプソディー
[ 演奏 ] 浜松市立南部中学校
[ 作品解説 ]
ごく大雑把に言って、日本の民謡は、二つの代表的旋法(陽旋法・陰旋法)と、琉球旋法によってできています。このラプソディーは、これら旋法の扱い方の、ひとつの提案として書きました。「こんな風に仕上げてみました、いかかでしょうか?」そんな曲です。
大きく分けて、三つの部分で構成されています。序奏は、静かな朝靄の山中から「木曽節」が聞こえてくる、そんな雰囲気です。軽快なテンポになると、メドレー風に次々と民謡が出て、沖縄の「谷茶前節」で前半を締めています。中間部は、陰旋法の三つの子守歌に、自由声部を加えた四声を、対位法的手法でまとめています。後半の「金毘羅船々」は、この曲単独で、アンコールなどで演奏しても良いでしょう。中程からの、カノン扱いをさらに発展させて、「いちどまわれば」から導き出した動機を使い、フガートをスタートさせています。その動機を「こんぴらふねふね~」の拡大テーマの対旋律として扱う、という構成になっています。
Kokopelli
[ 演奏 ] 浜松市立開成中学校
[ 作品解説 ]
Kokopelli(ココペリ)はアメリカインディアン、ホピ族のカチーナ(精霊、神)です。笛を吹いて音楽を使い部落間を旅をしながら人々に豊作、幸運をもたらしてくれる存在、平和を愛する精霊として古くから知られています。この曲はそのココペリが旅をする中、様々な大冒険をする姿を音の物語として表しています。主人公のココペリはソリストとなるフリューゲル/トランペット。冒頭のコラール的な部分はココペリと他の精霊達の誕生、会話、旅立ちを表現していて、その後の軽快なサンバの部分からは様々な部落での出会い、別れ、大冒険をする姿を表してあります。
演奏に関してですが、トランペットのソロパートは奏者の“吹きやすい様に”変えて下さい。ジャズ/ポップスの醍醐味、楽しさは”自由”から来る物です。譜面に書いてある物を忠実に吹くだけが音楽ではなく、吹いている奏者が自分の個性に合った様に歌う事が一番大切です。アドリブの部分も一応譜面に書いてありますが、ここも色々と自分のやりやすい様に、そして自分がやりたい様にチャレンジして自分の”歌”に変えてみて下さい。リズムセクションも同様、書いてある物はあくまでも”こんな感じで”みたいな一例としてる物なので自分の感覚で色々と変えてみて下さい。
音楽はコミュニケーションです。お客様と繋がる事、そして演奏者同士が繋がる為には一人一人が、技術的な物だけに拘らず、曲のイメージを強く持つ事によってその“物語”がお客様に届くようになります。自分自身がココペリになって大冒険してみて下さい!!!