バ ン ド 維 新

C O M
P O S E R S

作曲家紹介

NAKAHASHI Toshio中橋 愛生

中橋 愛生

1978年生。東京音楽大学作曲指揮専攻、及び同大学大学院を首席で修了。学部、大学院を通じて特待生奨学金を5回(甲種3回、乙種2回)受ける。
2002年、第71回日本音楽コンクール作曲部門(管弦楽作品)第三位。2008年、第18回日本管打・吹奏楽アカデミー賞(2007年度/作・編曲部門)を史上最年少で受賞。2009年および2010年、日本吹奏楽指導者協会(JBA)「下谷奨励賞」受賞。また、解説執筆やCDの企画構成への参加なども多く、2008年4月よりNHK-FM「吹奏楽のひびき」パーソナリティ、2010年1月より「レコード芸術」新譜月評・吹奏楽部門担当を務めている。
これまでに作曲を吉田峰明、池辺晋一郎、西村朗の各氏に、指揮法を汐澤安彦氏に師事。また、2000年より6年間、湯浅譲二氏のゼミ生および助手として 薫陶を受ける。現在、東京音楽大学非常勤講師、日本管打・吹奏楽学会理事、21世紀の吹奏楽”響宴”会員。

URL http://www003.upp.so-net.ne.jp/napp/

ラグランジュ・ポイントー吹奏楽のための

[ 作品解説 ]

「小編成」の「吹奏楽」にしか出来ない表現とは何だろうか?今回は「音の線的独立性・点的明瞭性」と「管楽器の指向性」に、それを求めた。
タイトルは、宇宙空間において2つの天体の重力の間で安定する位置を示す語。これは曲における、左右に分かれて配置された金管とフルートおよび打楽器の呼応や、指揮者と各奏者(時として独立したテンポ感が要求される)との関係から名付けられたもの。
しかし思うに、最大の「ラグランジュ・ポイント」は、「作曲者の内的必然」と「スクール・バンドを想定することによる種々の制限」との接点として生まれる「吹奏楽作品そのもの」なのではなかろうか。
(中橋愛生)

[ 編成 ]

Flute 1,2
Oboe(option)
Bassoon(option)

B♭ Clarinet 1,2,3
B♭ Bass Clarinet

E♭ Alto Saxophone 1,2
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone

B♭ Trumpet 1,2
F Horn 1,2
Trombone 1,2
Euphonium
Tuba
String Bass(option)

Percussion 1(Vibraphone / Tam tam / Xylophone)
Percussion 2(Bass Drum)
Percussion 3(Glockenspiel / Slap Whip / Marimba)
Percussion 4(Bass Drum)

風のファンファーレ ウインド・アンサンブルとフレキシブル・バンドのための祝典音楽

[ 作品解説 ]

10周年を記念した祝典曲との依頼。そのため内容は明快な祝祭的なもの。が、そこはバンド維新。音楽面ではなく編成面での提言を試みた。
小編成スクールバンドの難しさは、人数が少ないことによる楽器編成の不足とアンバランスさもさることながら、「初心者も必ず重要な役割を果たさなければならない」点にある。これを解消する方法として近年に注目を集めているのが「音域さえ適合していればどんな楽器で演奏しても構わない」という考えで作られた「フレキシブル・アンサンブル」だ。しかし、ここには各楽器固有の表現が失われる、上手な生徒には簡単すぎる(あるいは初心者には難しすぎる)、という問題がある。
この曲は「上手な生徒」を想定した6つのソロ・パート(Fl、Cl、A-Sax、Trp、HrnまたはEuph、Trb)と、初心者を想定したフレキシブル・パート(木管3、金管3、低音1)、それに打楽器3パートとピアノ、という編成で書かれている。フレキシブル・パートは各パートに最低1奏者いればよいが、複数の楽器が存在してもよく、場面によって奏者数を変えてもよい。また、ある箇所では1st flexを担当していた者が2nd flexに移る、といった工夫もよいだろう。場合によってはソロ・パートを複数人で重ねて演奏してもよいし、打楽器も1stはマルチを要求しているが分散させるのもよい。柔軟な運用で、各バンド独自の「色」を創って頂きたい。
曲自体も、全曲でコンサート・ピースとしても使えるが、部分的に抜粋し式典ファンファーレとしても使えるだろう。

(中橋 愛生)

[ 編成 ]

Solo Flute
Solo B♭ Clarinet
Solo E♭ Alto Saxophone
Solo B♭ Trumpet
Solo F French Horn(or Euphonium)
Solo Trombone

(1st Wood Wind Flexible)
Flute
Oboe
B♭Clarinet
(2nd Wood Wind Flexible)
B♭ Clarinet
E♭ Alto Saxophone
(3rd Wood Wind Flexible)
B♭ Bass Clarinet
B♭ Tenor Saxophone

(1st Brass Flexible)
B♭ Trumpet
F French Horn
(2nd Brass Flexible)
B♭ Trumpet
F French Horn
(3rd Brass Flexible)
F French Horn
Trombone
Euphonium
(Bass Flexible)
B♭ Bass Clarinet
E♭ Baritone Saxophone
Bassoon
Tuba
String Bass

Piano
Percussion 1(Suspended Cymbal / 4 Tom toms / Snare Drum / Bongo)
Percussion 2(Bass Drum / Triangle)
Percussion 3(Glockenspiel / Wind Chime / Vibraphone)

秘儀Ⅵ<ヘキサグラム>より  Ⅰ・Ⅲ・Ⅴ(フレキシブル編成版)

[ 作品解説 ]

「秘儀VI」は元々は金管六重奏のために作られたものです。本来「秘儀」は吹奏楽編成のための楽曲に付けられたシリーズ名ですが、この「VI」だけがそうではないため、吹奏楽でも演奏可能なようにすることを生前の西村先生は望んでいました。そこで「バンド維新2024」のために西村先生の指名により私が吹奏楽編成に編曲することとなりました。当初は全6曲のなかから抜粋・再構成する案もあったのですが、「バンド維新」用には第1・3・5曲を編曲、残る第2・4・6曲は別途編曲し、全曲の吹奏楽版を作成することにしました。
 編成は「秘儀II」と同様に「管楽器の選択設定が自由な7つのパートと、金属打楽器と膜質打楽器を中心とした3奏者による打楽器アンサンブル」という、いわゆるフレキシブル編成となっています。これは、元が金管アンサンブルという同質性の高い音色による室内楽であったため、特定の音色を想定することにそれほどの意味がないとして西村先生より指示されたものです。しかし、「楽器の選択が自由」ということは「可能性のあるどのような楽器の組み合わせであっても演奏可能でなければならない」ということでもあります。
 それを、原曲より1パート増やし部分的に重複させることで可能としました。原曲が「6」という数字に強い拘りがあることを懸念したのですが、西村先生は「吹奏楽編成にした時点でその意義は失われているので構わない」と生前に許容されました。1パート増えたことである程度の音の分散も行われており、奏者の負担が軽減されると同時に、多様な音色変化が期待できるように編曲されています。
 打楽器パートは完成後に西村先生に見ていただく予定だったのですが、それは叶いませんでした。が、生前の西村先生が私の考えに反対されたことは一度も無かったので、今回も許してくださるものと信じています。

【演奏に際して】
 オプションとしてコントラバスと打楽器3パートを含むパート1から7までのフレキシブル編成で編曲されています。
 各パートにつき最低1奏者ずついれば演奏可能なようになっていて、最少で7奏者から演奏できます。小編成・大編成の吹奏楽はもちろんのこと、クラリネット七重奏、サクソフォーン七重奏などの同属アンサンブル、木管金管混成の室内楽でも演奏可能です。金管アンサンブルで演奏することも一応は可能ですが、原曲の六重奏とは異なる声部配分・楽器割当となっていますので、金管楽器のみで演奏する場合は原曲版の使用を推奨します。
 オプションの打楽器は無くても演奏可能です。もし加える場合、第3曲「ホケット」に関しては3パートとも用いることを推奨します。3奏者を揃えることができない場合、第3曲は打楽器なしで演奏してください。
 原曲が金管楽器での演奏を想定しているため、この編曲では木管楽器に困難なタンギングが要求されています。技術的に難しい場合、適度に音を間引く、延ばしに変更する(替指トリルやビスビリャンド・トリルの併用を推奨)などで対処してください。
(中橋愛生)

[ 編成 ]

Part 1 in C (Flute)
Part 1 in C (Oboe)
Part 1 in B♭ (Clarinet, Soprano Saxophone, Trumpet)

Part 2 in B♭ (Clarinet, Soprano Saxophone, Trumpet)
Part 2 in E♭ (Alto Saxophone)

Part 3 in B♭ (Clarinet, Trumpet)
Part 3 in E♭ (Alto Saxophone)

Part 4 in E♭ (Alto Clarinet, Alto Saxophone)
Part 4 in B♭ (Bass Clarinet, Tenor Saxophone)
Part 4 in F (French Horn)

Part 5 in B♭ (Bass Clarinet, Tenor Saxophone)
Part 5 in C (Bassoon, Trombone)

Part 6 in B♭ (Bass Clarinet)
Part 6 in E♭ (Baritone Saxophone)
Part 6 in C (Bassoon, Euphonium)


Part 7 in B♭ (Bass Clarinet)
Part 7 in E♭ (Baritone Saxophone)
Part 7 in C (Bassoon)
Part 7 in C (Tuba)

String Bass (option)


Percussion(option)

1(Tam tam/Conga/Timpani)
2(Tubularbells/Bongo/Snare Drum)
3(Gran Cassa/Suspended Cymbal/Tom tom)

ALL