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作曲家紹介

NISHIMURA Akira西村 朗

西村 朗

大阪市に生まれる。東京藝術大学卒業、同大学院修了。

日本音楽コンクール作曲部門第1位(1974)、エリザベート国際音楽コンクール作曲部門大賞(77・ブリュッセル)、ルイジ・ダルッラピッコラ作曲賞(77・ミラノ)、尾高賞を5回(88・92・93・08・11)、中島健蔵音楽賞(90)、京都音楽賞[実践部門賞](91)、日本現代芸術振興賞(94)、エクソンモービル音楽賞(01)、第3回別宮賞(02)、第36回(04年度)サントリー音楽賞、第47回毎日芸術賞(05) 等を受賞。2013年紫綬褒章を授与される。この他、02年度芸術祭大賞に「アルディッティSQプレイズ西村朗『西村朗作品集5』」が、05年度芸術祭優秀賞に「メタモルフォーシス・西村朗室内交響曲」が選ばれる。2000年よりいずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督に就任、03年よりNHK-FM「現代の音楽」の解説を6年間、09年より同Eテレ「N響アワー」の司会者を3年間務めた。また、2015年4月からは、再度NHK-FM「現代の音楽」の解説を務める。2010年草津夏期国際音楽フェスティヴァルの音楽監督に就任。東京音楽大学教授。

秘儀I -管楽合奏のための-

[ 作品解説 ]

この曲のタイトルにいう「秘儀」は宗教的な架空の儀式を意味している。それは秘教的な性格を持つもので、シャーマニズムに属する類のものである。「秘儀」はシャーマン (巫女) の舞踊を中心にして展開される。その舞踊は旋回舞踊であり、舞踊者は旋回しつつ忘我 (トランス状態) に達し、招魂・招霊・降神の媒体となるに至る。
 この曲はそうしたシャーマンの秘密の舞踊儀式のための舞曲である。後半の8分の9拍子や6拍子は、舞踊が旋回性のものであることと関係している。曲中には速いテンポの点描音群ホケトゥスやヘテロフォニーといった語法の展開がみられ、東アジアや東南アジアの伝統的な宗教音楽 (儀式) の一部からの影響もみられる。
曲は以下の6つの部分により構成されている。
 1)冒頭から第31小節までは儀式の開始を告げる前奏部。
 2)第32小節からは序の舞曲。木管楽器群に16分音符のスタッカートの波動。アクセント位置のずれによる点描。金管楽器群はケチャに基づくホケトゥスを奏する。
 3)第64小節からは遅い舞曲。木管楽器群がエロティックな旋律のヘテロフォニックな絡みを官能的に奏する。
 4)第97小節からは8分の9拍子による第1の旋回舞曲。
 5)第113小節からは8分の6拍子による第2の旋回舞曲。
 6)第184小節からは終結部。旋回舞踊の興奮恍惚のきわみに至り、舞踊者 (シャーマン) はトランス状態で失神する。

[ 編成 ]

Flute 1,2
B♭ Clarinet 1,2
E♭ Alto Saxophone
B♭ Tenor Saxophone

B♭ Trumpet 1,2
F Horn 1,2
Trombone 1,2
Euphonium
Tuba

2 Timpani (6 Rin, Tamb.)
Percussion
(B.D. / Steel Drum / 2 Sus.Cym. / Sizzle Cymbal / Antique Cymbal /
Tam-tam(with Super Ball) / Mari. / Sleigh Bell)

秘儀II ~7声部の管楽オーケストラと4人の打楽器奏者のための~

[ 作品解説 ]

「秘儀」のシリーズは、宗教や内容を特定しない秘教的な祈祷の儀式をイメージして作曲されている。
〈秘儀II〉は、管楽器の選択設定が自由な7つのパートと、金属打楽器と膜質打楽器を中心とした4奏者による打楽器アンサンブルの組み合わせによって構成されている。
7つの各管楽パートは複数(同種もしくは異種)の楽器のユニゾンで奏されても良いし、単管のソロによっても良い。あるいはまた、ひとつのパートにおいて複数楽器による部分とソロの部分を設定しても良い。
出版スコアに示されている楽器設定は、あくまでもひとつのモデル・ケースに過ぎない。

曲は以下の5つの部分から成っている。

第一部(冒頭~第26小節)は、トゥッティの太いユニゾンの旋律(祈祷歌のような)を基調に作曲されている。
第二部(第27小節~第49小節)は、メリスマ(コブシのような旋律的装飾音)を伴うヘテロフォニー。
第三部(第50小節~第78小節)は、舞曲調の速いスタッカート点描群の流れと語るような太い旋律線の共存。
第四部(第79小節~第91小節)で、第一部的ユニゾンの回帰。
第五部(第92小節~最後)は、緊張感高く祈祷を締めくくるようなコーダ。

[ 編成 ]

〈I〉2 Piccolo
〈II〉Oboe & B♭Soprano Saxophone
〈III〉B♭2 Clarinet
〈IV〉B♭Clarinet & E♭Alto Saxophone
〈V〉B♭2 Trumpet
〈VI〉F 2Horn & B♭Tenor Saxophone
〈VII〉2 Trombone

Percussion 1(Vibraphone)
Percussion 2(Tubular Bells / 2 Chinese Gongs / 2 Sleigh Bells)
Percussion 3(Glockenspiel / 2 Suspended Cymbal)
Percussion 4(Tam tam / Gran Cassa)

※演奏表現の可能性を広げるため、〈I〉~〈VII〉の各パートの楽器は増減もしくは楽器の種類変更がなされても良いとする。

秘儀IV〈行進〉

[ 作品解説 ]

ひたひたと始まり、次第に速度をあげて高まって、最後は虚空に炸裂消滅する幻想のマーチ。
深い森の闇の向こうから、魔物の集団のような行進が近づいてくる。その群れにあっという間に包み込まれ、引きずられ、あおられるように自分も行進に加わる。
行進は全体がひとつの生き物のようにうねり、線状や点状に様態を変えつつ諧謔し、興奮し、狂乱し、叫びわめいて最後は疾走状態となり、ついには中空に炸裂するように消滅する。秘儀の祈祷が呼び起こす一種悪魔払い的な交響幻想行進。打楽器群の行進リズムに乗って、旋律的あるいは点描的なユニゾンが展開される。東洋風な旋法が現れ、一部ではバリ島のケチャ風なユニゾンも奏される。
前作、秘儀III〈旋回舞踊のためのヘテロフォニー〉が3拍子の舞踊曲であったのに対し、このIVは2拍子のマーチ。両曲は姉妹作である。IIIと同様に各楽器の使用音域も演奏が容易な範囲にとどめている。(西村 朗)

[ 編成 ]

Flute 1,2(Piccolo)
Oboe
Fagotto

B♭ Clarinet 1,2,3
B♭ Bass Clarinet

B♭ Soprano Saxophone
E♭ Alto Saxophone
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone

B♭ Trumpet 1,2
F Horn 1,2
Trombone 1,2
Euphonium
Tuba

Timpani
Snare Drum(鈴またはSleigh Bell) 1,2
Percussion (2 Suspended Cymbals / Tam-tam / Gran Cassa)

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