Series No.103 三浦 謙司

2016年5月15日に行われたアフタートークの様子をご紹介します。

Q. 本番前の精神統一法を教えてください。
僕の場合、リハーサルはできるだけ集中して行います。あまり長く弾きすぎると体力がなくなるので、短くきちんとリハーサルをして、終わったら一旦、他のことを考えたり、映画を見たり、ゲームをしたりしています。そして、公演が始まる15分前ぐらいになると、舞台周りをぐるぐる一人で歩いて、本番直前に一気に自分の世界を作り出して、本番を迎えます。

Q.どのようなことをして、ピアニストになったのですか?
もちろん練習は大事です。夢を持つことは、絶対に叶うと信じることです。「絶対にピアニストになる!」ということが夢だと思います。“なりたい”ではなくて“なる”と考えたら、絶対にできると思います。僕はそう信じています。そのために、なんでもやることはやる。できることは絶対やる。たとえ、ちょっと違う道に反れたとしても、たとえ、周りの人から頭おかしいぞと言われたとしても、「自分がこれだ!」と信じたものは絶対にやり通した方がいいと思います。

Q.ショパンの曲の中で一番好きな曲は何ですか?
今日弾いた中では、「バラード第4番」でしょうか。自分にとって、何回も演奏している曲なので思い出に残っています。それと「子守歌」も大好きです。ショパンはどれも全部好きですね。ショパンの曲に嫌いな曲はありません。その曲を勉強したら、するだけ面白くなるし、どんどん演奏しながら「こんな弾き方もあるんだな」とか。ピアノの詩人と呼ばれていたショパンなので、本当に奥深いと思います。

Q.外国生活が長いということで、語学は堪能ですか?
自分にとって、英語の方が日本語よりいいんですけど(笑)。独り言とか考え事とかは全部英語です。今、ドイツに3年半住んでいますが、授業はドイツ語ですし、日常生活やコミュニケーションもドイツ語です。しかし、日本の大学を出てドイツの大学に来る日本人は、なぜか日本人同士で固まってしまって、外人の人たちと触れ合おうとしない傾向があります。自分はほとんど外人だけに囲まれるようにして、いろんな文化に触れるようにしています。

Q.勉強の場を海外に選ばれた理由はなぜですか?
10歳まで神戸にいたのですが、8歳の時に、当時のピアノの先生と生徒さんたちと一緒にウィーンに行ってきまして、それが自分にとって初めての海外経験でした。その空気というか、世界の違いにすごく惚れて、勝手に「俺は絶対にヨーロッパに行く」と言ったらしいです。10歳に父親の転勤でドバイに引っ越したのが、本当に幸いなことで、それでヨーロッパに近づいたわけであり、なんとか13歳の時にそれが実現となりました。

Q.本日のスクリャービンの「練習曲嬰ハ短調」を聴いていた時に、昔のロシアのピアニストが弾いているかのように感じましたが、憧れのピアニスト、または好きなピアニストはいらっしゃいますか?
それこそ昔のロシアのピアニストは大好きです。ロシア音楽を弾くときは、必ずアプローチをイメージして、ホロヴィッツ、リヒテルとか、ヴァン・クライバーンにも憧れています。クライバーンはアメリカ人なのですが、いつもロシアの音楽を弾いていて、その世界をすごく理解しているなと思います。