Series No.101 青木 尚佳
2015年12月20日に行われたアフタートークの様子をご紹介します。
Q.お二人の相性が合うとおっしゃいましたが、それはどういった所から分かりますか。
青木:私も色々なピアニストと共演してきましたが、中島さんとは私が小学生の時からのお付き合いで、小学生の時は中島さんが教えてくれて、今もたくさんの事を教えてくれます。相性というのはすごく難しいですが、中島さんと合わせた時の阿吽の呼吸というか、どんなに練習をしていても本番では何が起こるか分からないし、そういった時もお互いのタイミングや間の取り方を打合せしなくてもフィーリングが合うという事なのかな。
中島:説明できない所ですね。なぜか合うものは合うし、合わないものは合わない。小さな差だと思いますが、上手・下手では全然なくて。美しいと思う所が一緒だとか、生活の中でもありますよね、これがおいしいと思うとか、これに涙が出るとか。見落としてしまいそうな所に美しさを感じるのが一緒だったりすると、やはり音にも繋がるんだなと思います。そういう微妙な所で、これといった答えはなかなか難しいですね。
Q.音楽の歴史でいうとバロックから現代までありますが、その中でどの年代の曲が一番好きですか。
青木:私が今一番好きな作曲家はシューベルトですが、バロックから現代曲まで色々ある中で、それぞれ全く違うのでどれが好きとかどれが得意とかというのはあまりないですね。現代曲には現代曲の難しさがあって、バロックやロマン派などもありますが、私が弾いてしっくりくるのはシューベルトやシューマン、チャイコフスキーなどで色々ありますね。
中島:いい音楽は時代を超えていると思うので、バロックもロマン派も現代もそれで分けられないというか、好きなものはすごく好きですし、これはちょっとなと思うものもあります。その中で相性のいい作曲家がいたり、例えばベートーヴェンが大好きだとか、全然違う時代と国でラヴェルが好きだったり。違うんだけれど、自分が好きだと思う所の共通点のようなものがあって、私もあまり時代では分けていないです。
Q.中島さんに質問です。先ほど相性という話がありましたが、相性の合わない人と共演する場合はどういった所で折り合いをつけますか。
中島:やはり頼んで頂いているからにはお応えするというか、共演して下さいと言って頂けるのはすごく嬉しい事なので、阿吽とまでいかない場合は、彼女・彼が何をしたいのかというのを納得できるまで聞き、同意見ではなくても共演者が何をしたいのかという事を、一生懸命できる限り理解しようと努力します。
Q.天才を育てる為には両親の影響も大きいと思います。先ほどお母さんのお話も出ていましたが、青木さんのお母さんは厳しい方でしたか。
青木:私は2歳10ヶ月からヴァイオリンを始めましたが、もちろん自分からやりたいと言ってやった訳でもないし、やはり小さい子に練習をさせるのはとても大変な事だと思います。そんな3歳、4歳の子が自らヴァイオリンを触って家で練習するなんて考えられないですよね。私は小学校1~2年生の頃から毎朝4時に起きて、学校に行く前に2時間必ず練習するという習慣を高校3年生まで続けていました。今では考えられませんが、それでもその生活を守るようにしてくれたのは母ですし、毎朝私よりも早く起きてココアを作ってくれたりして今ではすごく感謝しています。ただ小さい時はディズニーランドに行っても、『夢の国』なのにヴァイオリンは持って行くという、なんで旅行に行ってまで練習しないといけないのかという感じでしたが、今となってはそれがあったからここまで来られたというのはあります。
Q青木さんが今お使いになっているヴァイオリンはどういったもので、そのヴァイオリンとの相性はどうですか。手放したいと思う事はありますか。
青木:手放したいとは思っていません。というのも、私が今使っている楽器は小学校5年生の頃からもうかれこれ12年くらい使っていて、小さい頃に先生の練習が厳しくて泣いた涙の跡も付いています。名器と呼ばれるものはたくさんありますが、私の楽器は私ととても相性がいいと思いますし、楽器というのはどんどん変わっていきますが、この楽器は私の父と祖父が私に買ってくれたものでもあるので、手放そうと思った事は一度も無いです。
Q.孫が4歳ですが、ヴァイオリンを習いたいと言っています。ピアノもまだやったことがないのですが、ピアノを習ってからヴァイオリンに進んだ方がいいのでしょうか?
青木:私はヴァイオリンから始めて、ピアノも5歳くらいからずっとやっていました。私はロンドンで小さい生徒さん達を数人教えていて、彼らも全く音楽が分からない、ピアノも全く弾けませんが、ヴァイオリンを弾くにも音程が分かった方が良いので、できればピアノもやった方が良いのかなと思います。
中島:やはりピアノが弾けた方が便利です。ヴァイオリンのソナタを勉強する時にいつもピアニストがいる訳ではないので、ピアノのパートを弾けると、こういうハーモニーが鳴っているのかと確認できたり、役に立つことはいっぱいあると思います。ただ、ピアノは副科で音大では課されていて、管楽器の子で昔ピアノをやっていたという子がいて本当に達者に弾けるんですね。ただ、ピアニストってパーンとすぐに音が出るので、その感覚で管楽器を吹いている感じがあって、もしかしたらピアノを弾ける事があまりいい効果を生んでいないケースもあるのかなと思います。弾けなくても素晴らしい奏者はたくさんいますので別に拘らず、機会があったり好きであればやったらいいのではないかと思います。