Series No.97 ディナーラ・クリントン

2015年2月15日に開催される「アクト・ニューアーティスト・シリーズ2014」の最後を飾るのは、ディナーラ・クリントンさん。「留学中のロンドンでの生活」や「浜コンについて」などお伺いました。

芸術は人を育むものであり、私の演奏を通して、作曲家の思いを伝えたい

――現在留学しているロンドンの生活はいかがですか?また、お気に入りの場所や食べ物があったら教えてください。
現在、英国王立音楽大学修士課程に在学して、早2年目です。当初慣れないことも多く、毎日が大変でした。特に今年の夏は、国内外でのリサイタルや音楽祭、またコンクールの出場が重なり、せっかくのロンドンでの素晴らしい夏を楽しむ機会を逃してしまい残念です。
お気に入りの場所は...サウスバンク・センター(Southbank Centre)によくコンサートやオペラを見に出かけます。ロンドンには、ロンドン交響楽団とBBC交響楽団が本拠地とするコンサート・ホールがあるバービカン・センター(Barbican Centre)など、多くの有名な劇場や文化施設があり、一流のパフォーマンスを楽しむことができます。観光なら国会議事堂やウェストミンスター寺院は外せません。寺院の内部は本当に素晴らしく感動しました。
食べ物は...自炊しているのでグルメ・スポットにはあまり詳しくないのですが、寿司バーには行きましたね。また、モスクワでも「フィッシュ&チップス」を食べていたので、ロシアの食べ物だと思っていましたが、実は意イギリス名物だということがわかり驚きました。

――日本で行ってみたいところや好きな日本食は何ですか?
日本庭園など伝統的なものが好きなので、京都に行きたいですね。倉敷も好きです。
また、以前初めて歌舞伎を見た時の感動は、今でも忘れられません。好きな食べ物はなんといっても「寿司」です。

――浜松には、以前、浜松国際ピアノコンクール(以下、浜コンと称する)でいらしてますね。街や浜コンの印象をお聞かせください。
浜松は清潔で美しく、様々な特徴を持った街でとても気に入っています。人々が皆親切なのも大変印象的でした。私にとって、この思い入れの深い街で、今回リサイタルの機会を頂けたことは本当に光栄なことで感謝しています。

――浜コンに出場したことで何が変わりましたか?
若干17歳で、初めて2006年の第6回浜コンに出場し、「奨励賞」を受賞できたことが、その後の私の進むべき一つの道しるべを与えてくれました。特に印象的だったのは、コンクールという長丁場にも関わらず、大勢の方が来場し、熱心に傾聴して下さっている姿には心を打たれました。また、出場者のレベルの高さに驚かされました。会場のアクトシティも大変素晴らしく、今でも会場から流れてくる開幕ベルの音などが脳裏に浮かんできます。

――これからコンクールを受けようと思っている人、また出場者へのアドバイス・メッセージをお願いします。
浜松のコンクールこそ、出場する価値のあるコンクールだと思います。ステージに上がる直前までのウォーミング・アップ練習まで配慮され、本当に素晴らしいです。ですので、余計な心配は不要です。演奏に集中し、自分のベストを尽くして下さい。そして、コンクールを楽しむことも忘れずに!

――色々な思いが詰まった浜松でのリサイタルだと思いますが、リサイタルの内容をお聞かせください。
今回のリサイタルは、2006年の第6回浜コンのセミファイナルでショパンのエチュードを演奏したことや、その後のパデレフスキ国際ピアノコンクールで、名誉あるショパン特別賞を受賞したことを振り返る意味で、全てショパンの作品をお届けすることにしました。ショパンは、あらゆる年齢、国籍、職業を超えて多くの人々に愛されている作曲家であり、彼の作品は、心揺さぶる素晴らしいものであると思います。

――最後にピアノの演奏を通して、人々にどんなことを伝えていきたいですか?
芸術は、人を育むものです。私の演奏を通して、聴く人それぞれが作曲家のイメージを掴み、楽譜に託された彼らの思いを伝えることを念頭において演奏しています。幸福感であれ、満足感であれ、聴く人に何かを感じ取ってもらえることを願っています。そして、人々が私のピアノを聴いて、いつもより元気で幸せだと感じてもらえるような演奏を目指しています。

プロフィール

ウクライナ生まれ。モスクワ音楽院にてE.ヴィルサラーゼに師事。優秀な成績で卒業後、現在、英国王立音楽大学修士課程に在学中。2003年にザイラー国際ピアノコンクール優勝を皮切りに、ブゾーニ国際ピアノコンクール第2位(2007年、イタリア)など多くの国際ピアノコンクールで上位入賞を果たす。2013年11月には、ポーランドで行われた第9回パデレフスキ国際ピアノコンクールにて第2位及び特別賞を受賞。ラインガウ、ラ・ロック・ダンテロン等の音楽祭での演奏、英国、イタリア、フランス、ドイツ、日本、米国等でのリサイタル、またA.ルディンなど著名な指揮者のもと、オーケストラと協演するなど精力的に演奏活動を行っている。第6回浜松国際ピアノコンクール(2006年)では奨励賞を受賞し、日本にも多くのファンを持つ。